英雄なき時代に英雄を復活させること。新しいシリーズの幕開けを高らかに宣言する第四弾
前作から12年ぶりに製作された、シリーズ第4作。今回は犯人グループがサイバーテロを仕掛けるってことで、Web 2.0をもじった4.0という表記がタイトルに施されているが、うーん何となくこそばゆいですな。
3D映画として大々的に喧伝された『ジョーズ3』(1983年)ぐらい恥ずかしい感じ。時代の変化で風化してしまうバズワードでネーミングしてしまうと、後々で絶対後悔することになると思います。
第1作&第3作のジョン・マクティアナン、第2作のレニー・ハーリンに続いて今回監督を務めているのは、『アンダーワールド』(2003年)でスタイリッシュなフィルムメーカーとしての地位を築いたレン・ワイズマン。何でも彼は、『ダイ・ハード』シリーズの熱烈なファンで、映画の台詞を全て暗記しているほどらしい。
しかし彼は過去のシリーズをリスペクトしながらもそれに固執することなく、新しい『ダイ・ハード』スタイルを確立せんと腐心している。
シリーズの伝統だった空間的・時間的制約は撤廃され、エンディングで勇壮なクラシック音楽がかかることもなく、映像は粒子の荒いザラついたルックに生まれかわった。
禿げ頭の冴えない中年刑事が事件に巻き込まれ、泣き言を言いながら八面六臂の活躍する、というのがそもそも本シリーズのコンセプトだったはずだが、4作目にもなるとジョン・マクレーン(ブルース・ウィリス)のキャラもレベルアップ。
“世界一運の悪い男”だった彼は「自分がヒーローである」ということに自覚的になり、かかる危機に主体的に関わろうとする。今作で彼の相棒役を務めるハッカーのファレル(ジャスティン・ロング)に「あんたは英雄だ」と言われると、「代わりがいるならいつでも降りるさ」とつぶやく始末だ。
敵に娘を人質にとられるやいなや、「これからお前を殺しに行くぜ」とゴルゴ13ばりの殺人予告。パトカーをぶつけてヘリコプターを墜落させたり、F-35戦闘機の銃撃をかわしてハイウェイから飛び降りたり、その獅子奮迅ぶりはもはや『ターミネーター』(1984年)並み。
英雄なき時代に英雄を復活させること、それこそが『ダイ・ハード4.0』に課された大命題なのであり、新しいシリーズの幕開けを高らかに宣言するものなのだ。
ダイ・ハード(死んでも死なない男)は最上級のダイ・ハーデストとなり、不死の生命を得るに至った。実際、本作の仮題は『Die Hard 4:Die Hardest』だったらしいから、製作者側もかなりこのあたり意識的だったに違いない。
カンフーの達人を演じるマギーQは目の保養だったが、個人的にもっと嬉しかったのは“ハッカー界のジェダイ”ことワーロックを演じるケビン・スミス。『チェイシング・エイミー』(1997年)や『ドグマ』(1999年)で名を上げたオタク監督が、ホントにオタク役を演じているんだからナイスなキャスティングなり。
何でも彼は、新作でブルース・ウィリスを主演に迎えるそうだから、『ダイ・ハード4.0』を通じてちゃっかりウィリスに出演オファーをしていたのだろう。うーむ、食えない男である。
- 原題/Die Hard 4.0 / Live Free or Die Hard
- 製作年/2007年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/129分
- 監督/レン・ワイズマン
- 製作総指揮/アーノルド・リフキン、ウィリアム・ウィッシャー、マイケル・フォトレル
- 原案/デイヴィッド・マルコニー
- 脚本/マーク・ボンバック
- 音楽/マルコ・ベルトラミ
- 美術/パトリック・タトポロス
- 編集/ニコラス・デ・トス
- 衣装/デニース・ウィゲート
- 撮影/サイモン・ダガン
- ブルース・ウィリス
- ジャスティン・ロング
- ティモシー・オリファント
- クリフ・カーティス
- マギー・Q
- シリル・ラファエリ
- メアリー・エリザベス・ウィンステッド
- ケヴィン・スミス
- ジョナサン・サドウスキー
- クリスティーナ・チャン
- ジェリコ・イヴァネク
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