全編せわしなく突き進む、ジョージ・クルーニー主演のポリティカル・アクション
スティーヴン・スピルバーグ、ジェフリー・カッツェンバーグ、デヴィッド・ゲフィンという、ショウ・ビズの世界をリードする3人が共同で設立した映画会社ドリームワークスSKG(SKGはSpielberg、Katzenberg、Geffenの頭文字からとられた)の、記念すべき第1回劇場用作品。ロシアから盗み出された核弾頭の行方を追って、世界的な規模で展開するポリティカル・アクションである。
監督には大ヒットTVドラマ『ER 緊急救命室』の演出を手がけていた女性監督ミミ・レダー、主演にはその『ER 緊急救命室』で一躍スターダムに躍り出たジョージ・クルーニーが起用されている。
っていうかコレ、ノリはほとんどTVドラマ『24ーTwenty-Fourー』と一緒。 「犯人は狂信的にアメリカを憎んでいる過激派テロリスト!」であるとか、「時間内に事態を解決しないと手遅れになる!」とか、「 アメリカ本土に核が持ち込まれる!」とか、基本プロットはそのまんま。
しかし24時間の長尺でドラマを構築できる『24ーTwenty-Fourー』と違って、『ピースメーカー』は当然ながら上映時間が2時間しかない訳で、全編せわしないというか落ち着きが無いというか、緩急をつけることなく常時ノンストップで物語が突き進む。
ジョージ・クルーニー演じる国際テロ専門のデヴォー大佐が、作戦遂行のために無茶をしまくる(というよりも、人道的な行為から逸脱する)というのも、キーファー・サザーランド演じるジャック・バウアーと酷似している。
犯人のテロリストを狙撃するために、子供が視界に入っていようが躊躇せずSWAT隊員に「撃て!!」と言い放つシーンなんぞ、その端的な例といえよう。
まあとにもかくにも、『24ーTwenty-Fourー』が製作される以前に、もっと言えば9.11よりも前にこのような映画が作られていたというのは、なかなか先見の明があったと言えるのではないか。
しかしながら監督のミミ・レダーはどうにもアクション・シーンに冴えが感じられず、「足元をクローズアップで捉えて、誰かが近づいて来るのを示唆する」というような、凡庸極まりない演出を何度も繰り返すという愚行も犯しており、お世辞にもスピルバーグの起用に応えたことは言い難い。
テロリストであるボスニア外交官が、祖国の悲痛な歴史を物語るかのようにピアノを弾くというシーンにやたら時間を割いていたのも、やや情感に流れすぎた演出だったように思う。
ちなみにドリームワークスSKGは多額の負債を抱えてしまい、結局2005年12月11日に約16億ドルでパラマウントピクチャーズに買収されてしまった。映画では核の危機から世界を救えても、現実には会社の危機を救うことはできなかったようである。
- 原題/The Peacemaker
- 製作年/1997年
- 製作国/アメリカ
- 上映時間/124分
- 監督/ミミ・レダー
- 製作/ウォルター・パークス、ブランコ・ラスティグ
- 脚本/マイケル・シファー
- 撮影/ディートリッヒ・ローマン
- 音楽/ハンス・ジマー
- 美術/レスリー・ディリー
- 編集/デヴィッド・ローゼンブルーム
- ジョージ・クルーニー
- ニコール・キッドマン
- マーセル・ユーレス
- アレクサンダー・バリュー
- レネ・メドヴェセク
- マイケル・ボートマン
- ゴラン・ヴィシュニック
最近のコメント