世紀末的な終末感を漂わせる、ブリストル発トリップ・ホップ
3D、ダディーG、マッシュルームからなる3人組ユニット、マッシヴ・アタックのサウンドは何故かくもダークな質感に彩られているのか。
「この腐りきった世の中で、ハッピー・チャームなポップ・ソングなんぞ、単なる現実逃避にしか過ぎない!」とばかりに、彼らは重苦しく気怠いダウンテンポなエレクトロニカ…すなわちトリップ・ホップを世に送り出してきた。
そもそもトリップ・ホップとは、ソウルフルなブラック・ミュージックと、ヒップホップのリズムが融合したサウンドのこと。ジャマイカ系移民を多く擁する、イギリス西部の湾岸都市ブリストルで誕生した新しい音楽だ。
トリップ・ホップを代表するアーティストといえば、ポーティスヘッド、Trickyといったところか。そして彼らが鳴らす音楽は、とにかくとーっても暗い(もっとも自分たちがトリップ・ホップというジャンルで括られることには、強い嫌悪感を示しているようだが)。
そしてマッシヴ・アタックもその例に漏れず、とっても暗い。彼らにとって3枚目のアルバムとなる『Mezzanine』(1998年)の重苦しさは、MAXに振り切れている。
1998年にリリースされた作品とあってか、そのテクスチャーはもはや世紀末的終末感。初期のアルバムに見受けられたダビーでジャジィなテイストは消え失せ、ブレイクビーツを基本としたリズムに歪んだギターが幾層にも重なる。
これまで以上に密室的で、鬱屈感がブーストされた音像。あまりの音楽的変貌に付いて行けなくなったのか、マッシュルームはこのアルバムを最後にメンバーから脱退してしまった。
しかしまあ、このアルバムの一番の聴き所は、やはりM-3『Teardrop』だろう。コクトー・ツインズのエリザベス・フレイザーをゲスト・ヴォーカルに招いたこのトラックは、彼女の憂いに満ちた歌声と、圧倒的にダークネスでゴシックなサウンド・プロダクションが、神々しいまでにシンクロしている。
耳をそばたてれば、暗闇のなかに差し込む一筋の光、絶望のなかで育まれる希望が垣間見えることだろう。それは何によって垣間見えるかといえば、ズバリ「Love」である。
Love, love is a verb
Love is a doing word
Fearless on my breath
『Mezzanine』(中二階、宙ぶらりんの意味)と名付けられたこのアルバムは、その名の通り、もはや人類が行き場のない宙ぶらりんな状態になっていることを、ダウナーに証明してしまったアルバムといえる。
だが同時にマッシヴ・アタックは、あえて耐用年数が過ぎたであろう「Love」という言葉が持つ強さを復権させてもいるのだ。
- アーティスト/Massive Attack
- 発売年/1998年
- レーベル/Virgin
- Angel
- Risingson
- Teardrop
- Inertia Creeps
- Exchange
- Dissolved Girl
- Man Next Door
- Black Milk
- Mezzanine
- Group Four
- (Exchange)
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