凶暴なまでに剥き出しな野生を、Mobyのインテリジェンスでまとめあげたエレクトロニカ
初めてモービーの『GO』を聴いた時、「これって、思いっきりツイン・ピークスのパクリじゃねえか!」と、小生は烈火のごとく憤ったものだ。その後で、まさしくツイン・ピークスをサンプリングした曲だと知って赤面。マジごめん、Moby。
以降ハードコア・テクノは苦手だったので特に注目して聴いていなかったが、彼を強く意識しだしたのが、このアルバム『Play』(1999年)から。名曲揃いだが、特に必聴曲といえば、映画自体はオスカー級のつまらなさだった『ザ・ビーチ』(2000年)のサントラにも収められている、M-3『Porcelian』。
深海から月の光を浴びてキラキラと光る水面を見上げているかのような、アンビエンスな至高の一曲。『ザ・ビーチ』は、デジタル世代の若者(ディカプリオ様)が都市生活では味わえないヒューマンな感覚を求めて楽園を目指す物語だったが、ピッタリと音像が合致した。
排他的なまでに整合性が重要視される無機質系テクノではない。凶暴なまでに剥き出しな野生を、インテリジェンスでまとめあげた音楽である。
クラブミュージック、アンビエント、ヒップホップ、ブルース…あらゆる音楽を口当たりのいいカクテルに処方してしまう、スキンヘッドのバーテンダーことモービーは、1965年アメリカ生まれ。『白鯨』(1851年)で有名な作家モービー・ディックの遠い親戚で、名前もそれにちなんだらしい。
アルバム『18』(2002年)のジャケなんか見ると気のいいアンちゃんにしか見えないが、実は敬虔なクリスチャンにして菜食主義者、社会問題にも切り込む論客。彼の編み出す音楽にスピリチュアルな神々しさがあるのは、このためか。
と、ここまで書けば温厚篤実で潔癖な人物像を想像してしまうが、インタビューでは
僕はインターネットでポルノ・サイトを見て数時間過ごす。ポルノ・サイトに興味が無いと言う人は信じられないね。一番興味あるのは素人モノのポルノさ。
とエロ発言炸裂。
エミネムのことを「彼は人種差別主義者であり、女性嫌いで、好ましくない人間」とケチョンチョンに評してケンカふっかけてみたり、その素顔は意外にお茶目。敵には回したくないタイプだ。
最近では『We Are All Made Of Stars』がCMに使われたりして、日本での認知度も高くなったモービー。『ザ・ビーチ』でディカプリオが楽園を求めたように、彼も音楽を通して楽園を求めている。モービーが奏でるユートピアに、我々も旅立とう。
- アーティスト/Moby
- 発売年/1999年
- レーベル/V2
- Honey
- Find My Baby
- Porcelain
- Why Does My Heart Feel So Bad?
- South Side
- Rushing
- Bodyrock
- Natural Blues
- Machete
- 7
- Run On
- Down Slow
- If Things Were Perfect
- Everloving
- Inside
- Guitar Flute and String
- Sky Is Broken
- My Weakness
最近のコメント